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マリア・ジョアン・ピリスのピアノを聴きました [ピアノ]

4月12日、サントリーホールにマリア・ジョアン・ピリスさんのピアノ演奏会に行ってきました。
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昨年末、マリア・ジョアン・ピリスさんが2018年で引退すると知り、日本公演を聴きに行こうと決めていた。先行予約中に予約出来ず(いろいろあって忙しすぎて)、1月末にサントリーホールのS席、残り2枚というギリギリセーフで座席確保。良かった。

いつからピリスさんのピアノを聴き始めたか?思い返すと10代半ばの中学生の頃。自分とはタイプが違うけど、繊細で透明で柔和な中にも厳しい人間性も見え隠れし、作曲家の意図するところを「人間業か?」と思うくらい細かく表現する、何も飾らない、何も作りすぎない。すごいなーってずっと感じていた。自然体でピアノを極限まで歌わせるピリスさん。ずっと好きなピアニストだった。
いつまでも私の生きている間、聴くことが出来る!って思ってた。引退宣言を知ったとき、信じられなかったが、ピリスさんらしいとも思った。

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サントリーホール。
いよいよか。。。

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当初のプログラムは、ベートーベンに始まり、シューベルト、そしてベートーベン。
当日のプログラムで、オールベートーベンピアノソナタになっていた。
「悲愴」「テンペスト」「第32番」(ベートーベンが作曲した32曲のピアノソナタの最後の作品)

ピリスさん。
2010年、ワルシャワに滞在していたとき、聖十字架教会の前ですれ違った。突然でびっくりした。その数日後、夜、コンサートを聴きに行った帰り道、イタリアンレストランで食事をしているピリスさんを見かけた。日本から行った私がワルシャワでピリスさんに会えた(見かけた)って、すごい確率で起きた嬉しいこと。ステージでみるピリスさんと何ら変わりはなかった。歩いているだけでピアノが聴こえてきそうな、そんなことを思った。

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開場数分前。
数時間前からピリスさんのピアノを聴くための頭と心と耳の準備をしてきた私は、来るべき時が来る。と覚悟。

ステージに現れたピリスさんは引退をするとは思えないほど、ピアノの妖精が颯爽と楽器に向かって歩くように見えた。
挨拶をして、椅子に座るとまもなく「悲愴」が始まった。第一楽章の動機、胸につきささるように響いてきたな。二楽章、三楽章。そして、「テンペスト」。前半プログラムが終わり、「お願いだから、引退しないで・・・」とここですでに涙が流れた。

20分の休憩。
座席を立ち、白ワインかシャンパンを飲もうとロビーへ行った。

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他のお客さんたちも、気持ちは同じだろうな。ピリスさん最後の演奏が、後半プログラム一曲、ベートーベン最後のソナタ。覚悟なんだよな、覚悟しなくちゃ聴けないって。

白ワインがほんの少し、身体と心の張りつめたものを解いてくれた。
座席に戻る。

ライトが薄暗くなって、ピリスさんが再びステージへ。
ベートーベンピアノソナタ第32番Op.111。

私の座席は前から18列目。ホールにいる人々みんながピリスさんのほうへ身も心も乗り出していると感じた。人の魂の力って凄いと思った。最終楽章が始まると私の周辺のお客さんはそっとハンカチを出したり・・・
私も、止まることなく涙が流れた。ピアノの音がピアノの音に思えない。ベートーベンの書いた楽譜がピアノからピアノの音でなく聴こえてくることが不思議。「なんの音だろう?」「人の声?」「いや、そんなものじゃない。」。
はっと我に返ると、ピアノの音なんだ。自分の心は穏やかに安定している、でも涙は止まることはなかった。ピリスさんのピアノだったんだ。
最後の一音が空気の中から消えた瞬間、鳴りやまない拍手、立ち上がって拍手する人たちもいた。
カーテンコールの末、一曲ト長調の小品を演奏してくれた。
その後、何度も何度もカーテンコールのあらし。私も、居ても立っても居られない気持ちで立ち上がった。自分の掌がどれだけ痛かったかわからなくなるくらい拍手した。もう最後だと信じたくなかったが、ホールの照明が明るくなって、ピリスさんは最後に深く深く挨拶をし、もうステージには帰ってこなかったとき、やっぱりもう最後だったんだって思うしかなかったな。

サントリーホールを後にし、地下鉄に乗ったり電車に乗ったり、家についてもピリスさんのベートーベンが頭の中で止まらない。翌日、目が覚めても、どの部分がどうだったか、思い出す。ブログを書いている今も、鮮明に音が頭のなかで鳴る。
音は消えて残らないものと思うけど、こんなにも私の頭の中に残っているピアノの音。忘れることはないな。
最後だけど、最後にピリスさんのベートーベンを聴くことが出来て本当に幸せ。またヨーロッパのどこかで見かけたら、そっと声をかけてみるのが夢。これは夢過ぎるな。ピリスさんが大好きです。

ピリスさんのピアノを聴いて帰ったら夜中前。
なかなか寝付けず、赤ワインのコルクをあけた。しみじみ飲む。
0時過ぎても眠れず。1時でも眠くならず・・
こういうときは無理に寝なくて良いの^^

翌朝、寝不足状態で洗面所に行くと・・・・・

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「なんかさぁ、あたしたちのこと最近わすれてない???」
と、抗議にあった。(ビジーとヨハン。)
洗面台が使えないない。
「ごめんね。」「ごめんね。」とビジーとヨハンを抱っこして追い出した。

ake_i ♪
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コメント 8

SORI

ake_iさん はようございます。
感動の瞬間瞬間が伝わってきました。すばらしい体験をされたのですね。同然に会ったことがあるなど運命を感じました。
by SORI (2018-04-15 02:02) 

YAP

リンクされていたマリア・ジョアン・ピリスさんの BIOGRAPHY を拝見しましたが、実際の年齢を知って写真から予想した年齢との差に驚きました。
年齢を考えると、もうご本人も自分のイメージした演奏が完璧にできなくなってくると思われたのかなと勝手に想像します。
すごい人であるほど、力のあるうちに一線から引きたいのかもしれないですね。
by YAP (2018-04-15 07:09) 

ake_i

>SORIさん、
こんばんは。
人の出会いって想像つかないところでもあるものですね。その出会いがあったか、なかったか、で、人生変わっちゃったりしますもの☆

>YAPさん、
私もピリスさんの今の年齢、はっきりわかっていませんでした。なので調べてびっくりしましたよ。仕事っていつまでも出来るものとは限らないと私も思います。自分で定年はいつにするかと考えないといつまでも仕事出来てしまう。私はあと20年弱だな、いや、そこまでもたないかも^^;ピリスさん、すごいですね。ポスターに写ったピリスさん、ステージで先日みたピリスさん、同じでした☆
by ake_i (2018-04-15 19:41) 

ChatBleu

興奮が伝わってきます。
あー、何を書いてもダメだわ、これは(^^;)
感動にひたってくださいませ。
by ChatBleu (2018-04-15 21:23) 

kuwachan

感動の演奏会だったのですね。
チケット取れて本当に良かったですね。
先日聴かせて頂いたake_iさんの演奏が脳内で甦りました。
その節は本当にありがとうございました。
by kuwachan (2018-04-15 22:00) 

ake_i

>ChatBleuさん、
わかります。
この手のブログは私が読者でも・・・^^;
なので、自分で書いてても書ききれないと思いました。ブログは作文の練習になりますね☆

>kuwachanさん、
チケット。取るのちょっと焦りました。S席は舞台に向かって左側と中央席は完売で右側のこの二席しか・・。ゲットできて本当に良かったです。
私、ショパン苦手なんです。本当はシブい系が・・・いえいえ、とんでもないこちらこそ聴いてくださってありがとうございました^^
by ake_i (2018-04-16 08:44) 

moz

ぼくも、D935が頭の中でずっとなっています。
12日は結局死後土手行けなかったのですが(とても残念)17日のコンサートには行くことができました。前半のモーツアルトの2曲もすごく良かった。13番の3楽章はコンチェルトみたいに聴こえてピリスさんってやっぱりすごいと思いましたが、後進のD935は、もう圧巻ですごくて感動しまくりで、涙が出そうで…。これで終わりなんだと思うと余計で。
ひき終わった後は、ほぼ全員がスタンディングオーベーション。ぼくも初めてコンサートで立ってしまいました。鳴りやまない拍手。今までで一番の演奏、コンサートでした。
D935も実は初めて聴きました。この曲もぼくね宝物です。ブログにも機会があればまた書きたいと思っています。ピリスさん、いつまでも元気で後進の方たちの指導してください。
長くなってしまいました。でも、ake_iさんのお書きになった感じと、今の僕の感じがすごく同じに思えたので。
by moz (2018-04-19 06:45) 

ake_i

>mozさん、
mozさん、コメントを有難うございます。
モーツアルト、のびのびしていたでしょうね^^
そしてD935。
mozさんのブログを読んで、もともと大好きだったこの作品のこと、振り返る日々が続いてます。
ピリスさんの演奏、聴くことが出来なかったけどmozさんのブログを読み「想像」で本番の演奏をイメージしてます。

良い演奏会。なかなか出会うことが出来ません。
好きなピアニスト、どんどん良いピアノを弾くようになって年輪を重ねていく。これから誰の演奏会を聴きに行こうかとさがしてみると、ピリスさんの影響からか、そう簡単にコンサートホールに行けなくなってしまってます^^;

お返事がおそくなってごめんなさい。
私もピリスさんのことと共感しながらブログでコメントのやりとりが出来てとても嬉しいです♪


by ake_i (2018-05-08 13:00) 

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